特開2010-219495|太陽電池用透明部材および太陽電池

産業上の利用可能性

微細凹凸構造を表面に有する物品の製造方法は、光学部材(反射防止物品、回折格子物品、光散乱物品等)、太陽電池基材向けの光閉じ込め構造付基材等の効率的な量産にとって有用である。

背景

太陽電池においては、入射する光が表面で反射して受光損失が発生しないように、光の入射側の表面に反射防止処理が施されている。太陽電池としては、例えば、下記のものが開示されている。
太陽電池素子の受光面側がガラスで保護され、ガラスの表面に低反射コーティング層が設けられた太陽電池。受光面側のガラス基板の表面に、低屈折率透明無機薄膜と高屈折率透明無機薄膜とを交互に積層してなる反射防止膜が形成された色素増感型太陽電池。 しかし、低反射コーティング層や反射防止膜は、反射率が十分に低いとはいえず、また反射率の波長依存性を有するため、一部の波長の光にしか効果がないという問題を有する。太陽電池は、可視光領域から近赤外線領域まで発電感度を有するため、太陽電池における反射防止処理には、可視光領域から近赤外線領域の全域において反射率を低減することが求められている。

課題

可視光領域から近赤外線領域の全域において反射率を低く抑えることができる太陽電池用透明部材部材、および入射する光の反射が抑えられ、受光損出が少ない太陽電池を提供する。

解決手段

太陽電池用透明部材は、表面に複数の凸部を有する太陽電池用透明部材であって、凸部間の平均周期が、400nm以下であり、前記凸部の先端部の幅TWと前記凸部の底部の幅BWとの比(TW/BW)が、0.3〜0.8であり、凸部の高さHと前記BWとの比(H/BW)が、1.5以上であることを特徴とする。光の入射側となる第1の主表面と、該第1の主表面とは反対側の第2の主表面とを有し、第1の主表面および第2の主表面の両方が、凸部を有することが好ましい。凸部が形成された側の表面が光の入射側となるように配置されたものであることを特徴とする。

実施例

図9 太陽電池用透明部材のシミュレーションモデルの層構造

太陽電池用透明部材のシミュレーションモデルとしては、図9に示す層構造のものを用いた。該シミュレーションモデル90は、上から順に、複数の凸部19が平面六方格子の配置となるように間隔:100nmで形成されたポリメタアクリレート層92(厚さ:0.2mm、波長900nmにおける屈折率:1.482、消衰係数:6.49×10−23)、ポリエチレンテレフタレート層94(厚さ:0.037mm、波長900nmにおける屈折率:1.667、消衰係数:1.65×10−24)、吸収層100(境界条件なので厚さなし)から構成される。
太陽電池のシミュレーションモデルとしては、図10に示す層構造のものを用いた。該シミュレーションモデル91は、上から順に、複数の凸部19が平面六方格子の配置となるように間隔:100nmで形成されたポリメタアクリレート層92(厚さ:0.2mm、波長900nmにおける屈折率:1.482、消衰係数:6.49×10−23)、ポリエチレンテレフタレート層94(厚さ:0.037mm、波長900nmにおける屈折率:1.667、消衰係数:1.65×10−24)、ポリビニルブチラール層96(厚さ:1mm、波長900nmにおける屈折率:1.477、消衰係数:6.49×10−23)、結晶シリコン系太陽電池素子層98(厚さ:0.3mm、波長900nmにおける屈折率:3.64、消衰係数:3.72×10−23)、吸収層100(境界条件なので厚さなし)から構成される。

【符号の説明】 10 太陽電池用透明部材 19 凸部 50 太陽電池 60 太陽電池 80 太陽電池

シミュレーションソフトウエアとしては、「Diffract MOD(Rsoft社)」を用い、Rigorous Coupled Wave Analysis (RCWA)法に基づきマクスウェル方程式を解いた。

図9のシミュレーションモデルにおけるTW、BWおよびHを、表1に示す値に設定し、入射角αが5°の入射光(波長:500nm、800nm、1000nm)に対する反射率をシミュレーションにより求めた。結果を表1に示す。なお、比較例2(TW/BW=0)における凸部19の形状は、先端部が先鋭状となった断面三角形の円錘形状であり、比較例6(TW/BW=1.0)における凸部19の形状は、側面が垂直に立ち上がり、先端部が曲面とされた断面逆U字形の略円柱形状である。

表1

また、実施例について、図9のシミュレーションモデルにおける入射角αが5°の入射光に対する反射率(シミュレーション)のグラフを図11に示す。さらに、実施例1については、下記の製造方法にしたがって実際に太陽電池用透明部材を作製し、入射角5°の入射光に対する反射率を実測した。反射率のグラフを図11に示す。
図11 入射角5°の入射光対する反射率のグラフ 純度99.99%のアルミニウムビレットから機械加工で得た厚さ2mm、直径75mmのアルミニウム円板に羽布研磨処理を施した後、電解研磨を行った。鏡面化を行ったアルミニウム円板を、0.3Mシュウ酸水溶液中で、浴温17℃において直流40Vの条件下で30分間陽極酸化を行い、第1の酸化皮膜を形成した。形成した酸化物層を、6質量%のリン酸と1.8質量%のクロム酸混合水溶液中で一旦溶解除去した後、再び同一条件下において、30秒間陽極酸化を行った。その後、5質量%リン酸30℃中に8分間浸漬し、孔径拡大処理を施した。この操作を5回繰り返すことで、周期100nm、細孔径開口部90nm、底部50nm、孔深さ220nmのテーパー状細孔を有する鋳型を得た。
得られた鋳型はダイキン化成社製商品名オプツールDSXをフッ化炭素系化合物の濃度が0.1質量%になるようにハーベス社製商品名HD−1100Zで希釈して離型剤液を作製し、この離型剤液に10分間浸漬した後風乾を20時間して鋳型とした。このようにして得られた鋳型と東洋紡社製PETフィルム商品名「A4300」の間に活性エネルギー線硬化組成物を充填して高圧水銀ランプで積算光量3000mJ/cmの紫外線を照射して微細凹凸構造を有するフィルムを得た。

図10のシミュレーションモデルにおける結晶シリコン系太陽電池素子層98の表面への到達エネルギーの入射角依存性を、シミュレーションにより確認した。実施例11、比較例7の各入射角αにおける到達エネルギー、および比較例7の到達エネルギーに対する実施例11の到達エネルギーの向上率を、表2に示す。なお、到達エネルギーは、下記式から算出する。到達エネルギー=標準太陽光スペクトル×結晶シリコン系太陽電池素子の分光感度×透過率。

表2

表2の結果から、実施例11のシミュレーションモデルでは、比較例7のシミュレーションモデルに比べ、1日あたり約9%の発電量の向上が見込まれる。

図1 太陽電池用透明部材の一例を示す断面図

太陽電池用透明部材

図1は、本発明の太陽電池用透明部材の一例を示す断面図である。太陽電池用透明部材10は、部材本体12と、部材本体12に接着剤層14を介して貼着された、表面に複数の凸部(図示略)を有する反射防止フィルム16とを有する。

部材本体

部材本体12は、光を透過できる部材である。部材本体12の材料としては、ガラス、アクリル系樹脂、ポリカーボネート、スチレン系樹脂、ポリエステル、セルロース系樹脂(トリアセチルセルロース等)、ポリオレフィン、脂環式ポリオレフィン等が挙げられる。部材本体12は、1種の材料のみからなるものであってもよく、各層の材料が異なる積層体からなるものであってもよい。
部材本体12の形状は、図示例のような第1の主表面(光の入射側)と、該第1の主表面とは反対側の第2の主表面とが平行とされた板状に限定されず、第1の主表面(光の入射側)に対して第2の主表面が傾斜した断面三角形のくさび形状であってもよく、一方の主表面または両方の主表面が凹面または凸面とされたレンズ形状であってもよい。部材本体12の形状がプリズム形状やレンズ形状の場合、太陽電池用透明部材10に集光機能を付与でき、太陽電池の受光効率を向上できる。また、部材本体12には、例えば後述する図8に示すような公知の導光板に採用されているような導光機能を付与してもよい。部材本体12が導光機能を有する場合、太陽電池の受光効率をさらに向上できる。

接着剤層

接着剤層14の接着剤としては、公知の透明接着剤、粘着剤、両面接着テープ、粘着テープ等が挙げられる。

反射防止フィルム

図2

反射防止フィルム16は、図2に示すように、透明性基材18と、透明性基材18の表面に形成された、複数の凸部19を有する硬化樹脂膜20とを有する。
透明性基材18は、光を透過できるフィルムやシートである。透明性基材18の材料としては、ガラス、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、セルロース系樹脂(トリアセチルセルロース等)、ポリオレフィン系樹脂、脂環式ポリオレフィン系樹脂等が挙げられる。透明性基材18は、1種の材料のみからなるものであってもよく、各層の材料が異なる積層体からなるものであってもよい。
硬化樹脂膜20は、例えば後述の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化物からなる膜であり、表面に複数の凸部を有する。
硬化樹脂膜20の表面に形成される凸部としては、陽極酸化アルミナの表面の複数の細孔(凹部)を転写して形成されたものが好ましい。
複数の凸部19は、略円錐形状、角錐形状等の複数の突起(凸部)が可視光の波長以下の間隔で配列した、いわゆるモスアイ構造を形成していることが好ましい。モスアイ構造は、空気の屈折率から材料の屈折率に連続的に屈折率が増大していくことで有効な反射防止の手段となることが知られている。
凸部19間の平均周期は、可視光の波長以下、すなわち400nm以下であり、200nm以下がより好ましく、150nm以下が特に好ましい。ここで、凸部19間の平均周期とは、硬化樹脂膜20の断面を電子顕微鏡で観察し、隣接する凸部19間の間隔P(凸部19の中心から隣接する凸部19の中心までの距離)を50点測定し、これらの値を平均したものである。
陽極酸化アルミナのモールドを用いて凸部19を形成した場合、凸部19間の平均周期は100nm程度となり好ましい。
また凸部19間の平均周期は、凸部19の形成のしやすさの点から、25nm以上が好ましい。また、凸部19間の平均周期は、光の回折による高入射角の光の取り込み効果が期待できる点から、80nm以上が好ましく、130nm以上がより好ましく、150nm以上が特に好ましい。太陽電池に入射する光は、時間や季節によって大きく変わるため、光の回折による高入射角の光の取り込み効果も期待できる太陽電池用透明部材10は、太陽電池の保護板、透明電極用透明基板等としてとりわけ有用である。
凸部19の先端部の幅TWと凸部19の底部の幅BWとの比(TW/BW)は、0.3〜0.8である。TW/BWが0.3以上であれば、近赤外線領域における反射率を低く抑えることができる。TW/BWが0.8以下であれば、可視光領域における反射率を低く抑えることができる。
TWおよびBWは、硬化樹脂膜20の断面を電子顕微鏡で観察することによって測定できる。
TWは、凸部19の先端部が平面の場合は、該平面における幅とし、凸部19の先端部が曲面の場合は、凸部19の側面が先端部の曲面に変わる変曲点における幅とする。凸部19の先端部が先鋭状である(平面または曲面が存在しない)場合、TWは0となる。
BWは、凸部19の周囲に形成される凹部の最底部と同一平面(以下、基準面と記す。)における幅とする。
ここで、凸部19間の平均周期に対してBWが小さいと、凸部19が存在しない硬化樹脂膜20の表面が増加する傾向にあり、反射が発生するため好ましくない。よって、BWは、凸部19間の平均周期より大きいことが好ましく、(凸部19間の平均周期×0.8)より大きいことがより好ましい。

凸部19の高さHとBWとの比(H/BW)は、1.5以上であり、2.0以上が好ましく、3.0以上がさらに好ましい。H/BWが1.5以上であれば、可視光領域から近赤外線領域の全域において反射率を低く抑えることができる。H/BWは、凸部19の機械的強度の点から、5.0以下が好ましい。
Hは、100〜500nmが好ましく、150〜400nmがより好ましい。凸部19の高さが100nm以上であれば、反射率が十分に低くなり、かつ反射率の波長依存性が少ない。凸部19の高さが500nm以下であれば、凸部19の機械的強度が良好となる。
Hは、硬化樹脂膜20の断面を電子顕微鏡で観察することによって測定できる。Hは、前記基準面から凸部19の最頂部までの高さとする。
TW/BWおよびH/BWは、後述する表面に陽極酸化アルミナを有するモールドの製造条件、該モールドの細孔(凹部)内に充填される活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の粘度(特開2008−197216号公報参照)等を適宜選択することにより、調整できる。
硬化樹脂膜20の屈折率と透明性基材18の屈折率との差は、0.2以下が好ましく、0.1以下がより好ましく、0.05以下が特に好ましい。屈折率差が0.2以下であれば、硬化樹脂膜20と透明性基材18との界面における反射が抑えられる。
表面にモスアイ構造を有する場合、その表面が疎水性の材料から形成されていればロータス効果により超撥水性が得られ、その表面が親水性の材料から形成されていれば超親水性が得られることが知られている。
硬化樹脂膜20の材料が疎水性の場合のモスアイ構造の表面の水接触角は、90゜以上が好ましく、100゜以上がより好ましく、110゜以上が特に好ましい。水接触角が90゜以上であれば、水汚れが付着しにくくなるため、十分な防汚性が発揮される。また、水が付着しにくいため、着氷防止を期待できる。
硬化樹脂膜20の材料が親水性の場合のモスアイ構造の表面の水接触角は、25゜以下が好ましく、23゜以下がより好ましく、21゜以下が特に好ましい。水接触角が25゜以下であれば、表面に付着した汚れが水で洗い流され、また油汚れが付着しにくくなるため、十分な防汚性が発揮される。水接触角は、硬化樹脂膜20の吸水によるモスアイ構造の変形、それに伴う反射率の上昇を抑える点から、3゜以上が好ましい。

太陽電池用透明部材の製造方法

太陽電池用透明部材10は、部材本体12と反射防止フィルム16とを接着剤層14を介して貼着することにより製造される。また基材本体12に直接、モスアイ構造を形成しても良い。
反射防止フィルム16は、例えば、図3に示す製造装置を用いて、下記のようにして製造される。複数の凸部19に対応した複数の凹部(図示略)を表面に有するロール状モールド22と、ロール状モールド22の表面に沿って移動する帯状の透明性基材18との間に、タンク24から活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を供給する。
図3 太陽電池用透明部材に用いる反射防止フィルムの製造装置の一例を示す構成 ロール状モールド22と、空気圧シリンダ26によってニップ圧が調整されたニップロール28との間で、透明性基材18および活性エネルギー線硬化性樹脂組成物をニップし、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を、透明性基材18とロール状モールド22との間に均一に行き渡らせると同時に、ロール状モールド22の凹部内に充填する。
ロール状モールド22と透明性基材18との間に、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物が挟まれた状態で、ロール状モールド22の下方に設置された活性エネルギー線照射装置30から、透明性基材18を通して活性エネルギー線硬化性樹脂組成物に活性エネルギー線を照射し、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を硬化させることによって、ロール状モールド22の表面の複数の凹部が転写された硬化樹脂膜20を形成する。
剥離ロール32により、表面に硬化樹脂膜20が形成された透明性基材18を剥離することによって、反射防止フィルム16を得る。活性エネルギー線照射装置30としては、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ等が好ましく、この場合の光照射エネルギー量は、100〜10000mJ/cmが好ましい。

ロール状モールド

図4 表面に陽極酸化アルミナを有するモールドの製造工程を示す断面

ロール状モールド22は、表面に陽極酸化アルミナを有するモールドである。ロール状モールドは、反射防止フィルムの大面積化が可能であり、且つ作製が簡便である。
陽極酸化アルミナは、アルミニウムの多孔質の酸化皮膜(アルマイト)であり、表面に複数の細孔(凹部)を有する。表面に陽極酸化アルミナを有するモールドは、例えば、下記(a)〜(e)工程を経て製造できる(図4参照)。
(a)ロール状のアルミニウムを電解液中、定電圧下で陽極酸化して酸化皮膜を形成する工程。
(b)酸化皮膜を除去し、陽極酸化の細孔発生点を形成する工程。
(c)ロール状のアルミニウムを電解液中、再度陽極酸化し、細孔発生点に細孔を有する酸化皮膜を形成する工程。
(d)細孔の径を拡大させる工程。
(e)前記(c)工程と(d)工程を繰り返し行う工程。

(a)工程:

図4に示すように、アルミニウム34を陽極酸化すると、細孔36を有する酸化皮膜38が形成される。ここでアルミニウムの純度は、99%以上が好ましく、99.5%以上がより好ましく、99.8%以上が特に好ましい。アルミニウムの純度が低いと、陽極酸化した時に、不純物の偏析により可視光を散乱する大きさの凹凸構造が形成されたり、陽極酸化で得られる細孔の規則性が低下したりすることがある。 電解液としては、シュウ酸、硫酸等が挙げられる。

1)シュウ酸を電解液として用いる場合:シュウ酸の濃度は、0.7M以下が好ましい。シュウ酸の濃度が0.7Mを超えると、電流値が高くなりすぎて酸化皮膜の表面が粗くなることがある。化成電圧が30〜60Vの時、周期が100nmの規則性の高い細孔を有する陽極酸化アルミナを得ることができる。化成電圧がこの範囲より高くても低くても規則性が低下する傾向にある。電解液の温度は、60℃以下が好ましく、45℃以下がより好ましい。電解液の温度が60℃を超えると、いわゆる「ヤケ」といわれる現象がおこり、細孔が壊れたり、表面が溶けて細孔の規則性が乱れたりすることがある。
2)硫酸を電解液として用いる場合:硫酸の濃度は0.7M以下が好ましい。硫酸の濃度が0.7Mを超えると、電流値が高くなりすぎて定電圧を維持できなくなることがある。化成電圧が25〜30Vの時、周期が63nmの規則性の高い細孔を有する陽極酸化アルミナを得ることができる。化成電圧がこの範囲より高くても低くても規則性が低下する傾向がある。電解液の温度は、30℃以下が好ましく、20℃以下がよりに好ましい。電解液の温度が30℃を超えると、いわゆる「ヤケ」といわれる現象がおこり、細孔が壊れたり、表面が溶けて細孔の規則性が乱れたりすることがある。
(b)工程:図4に示すように、酸化皮膜38を一旦除去し、これを陽極酸化の細孔発生点40にすることで細孔の規則性を向上することができる。酸化皮膜を除去する方法としては、アルミニウムを溶解せず、酸化皮膜を選択的に溶解する溶液に溶解させて除去する方法が挙げられる。このような溶液としては、例えば、クロム酸/リン酸混合液等が挙げられる。
(c)工程:図4に示すように、酸化皮膜を除去したアルミニウム34を再度、陽極酸化すると、円柱状の細孔36を有する酸化皮膜38が形成される。陽極酸化は、(a)工程と同様な条件で行えばよい。陽極酸化の時間を長くするほど深い細孔を得ることができる。
(d)工程:図4に示すように、細孔36の径を拡大させる処理(以下、細孔径拡大処理と記す。)を行う。細孔径拡大処理は、酸化皮膜を溶解する溶液に浸漬して陽極酸化で得られた細孔の径を拡大させる処理である。このような溶液としては、例えば、5質量%程度のリン酸水溶液等が挙げられる。細孔径拡大処理の時間を長くするほど、細孔径は大きくなる。
(e)工程:図4に示すように、(c)工程の陽極酸化と、(d)工程の細孔径拡大処理を繰り返すと、直径が開口部から深さ方向に連続的に減少する形状の細孔36を有する陽極酸化アルミナが形成され、表面に陽極酸化アルミナを有するモールド(ロール状モールド22)が得られる。繰り返し回数は、合計で3回以上が好ましく、5回以上がより好ましい。繰り返し回数が2回以下では、非連続的に細孔の直径が減少するため、このような細孔を有する陽極酸化アルミナを用いて製造された硬化樹脂膜20の反射率低減効果は不十分である。
陽極酸化アルミナの表面は、硬化樹脂膜20との分離が容易になるように、離型剤で処理されていてもよい。処理方法としては、例えば、シリコーン樹脂またはフッ素含有ポリマーをコーティングする方法、フッ素含有化合物を蒸着する方法、フッ素含有シランカップリング剤またはフッ素含有シリコーン系シランカップリング剤をコーティングする方法等が挙げられる。
細孔36の形状としては、略円錐形状、角錐形状等が挙げられる。細孔36間の平均周期は、可視光の波長以下、すなわち400nm以下である。細孔36間の平均周期は、25nm以上が好ましい。細孔36の深さは、100〜500nmが好ましく、150〜400nmがより好ましい。細孔36のアスペクト比(細孔の深さ/細孔の開口部の幅)は、1.5以上が好ましく、2.0以上がより好ましい。図4に示すような細孔36を転写して形成された硬化樹脂膜20の表面は、いわゆるモスアイ構造となる。

活性エネルギー線硬化性樹脂組成物

活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、重合性化合物および重合開始剤を含む。
重合性化合物としては、分子中にラジカル重合性結合および/またはカチオン重合性結合を有するモノマー、オリゴマー、反応性ポリマー等が挙げられる。活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、非反応性のポリマー、活性エネルギー線ゾルゲル反応性組成物を含んでいてもよい。
ラジカル重合性結合を有するモノマーとしては、単官能モノマー、多官能モノマーが挙げられる。
単官能モノマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、s−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、アルキル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート誘導体;(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリロニトリル;スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン誘導体;(メタ)アクリルアミド、N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド誘導体等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
多官能モノマーとしては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、イソシアヌール酸エチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル)プロパン、1,2−ビス(3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)エタン、1,4−ビス(3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ブタン、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物ジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、メチレンビスアクリルアミド等の二官能性モノマー;ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンプロピレンオキシド変性トリアクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキシド変性トリアクリレート、イソシアヌール酸エチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート等の三官能モノマー;コハク酸/トリメチロールエタン/アクリル酸の縮合反応混合物、ジペンタエリストールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリストールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート等の四官能以上のモノマー;二官能以上のウレタンアクリレート、二官能以上のポリエステルアクリレート等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
カチオン重合性結合を有するモノマーとしては、エポキシ基、オキセタニル基、オキサゾリル基、ビニルオキシ基等を有するモノマーが挙げられ、エポキシ基を有するモノマーが特に好ましい。
オリゴマーまたは反応性ポリマーとしては、不飽和ジカルボン酸と多価アルコールとの縮合物等の不飽和ポリエステル類;ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリオール(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、カチオン重合型エポキシ化合物、側鎖にラジカル重合性結合を有する上述のモノマーの単独または共重合ポリマー等が挙げられる。
非反応性のポリマーとしては、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリウレタン、セルロース系樹脂、ポリビニルブチラール、ポリエステル、熱可塑性エラストマー等が挙げられる。
活性エネルギー線ゾルゲル反応性組成物としては、アルコキシシラン化合物、アルキルシリケート化合物等が挙げられる。アルコキシシラン化合物としては、下記式(1)の化合物が挙げられる。

xSi(OR ・・・(1)

ただし、R1、R2は、それぞれ炭素数1〜10のアルキル基を表し、x、yは、x+y=4の関係を満たす整数を表す。

アルコキシシラン化合物としては、テトラメトキシシラン、テトラ−i−プロポキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトラ−sec−ブトキシシラン、テトラ−t−ブトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、トリメチルプロポキシシラン、トリメチルブトキシシラン等が挙げられる。

アルキルシリケート化合物としては、下記式(2)の化合物が挙げられる。

O[Si(OR)(OR)O]zR ・・・(2)

ただし、R3〜R6は、それぞれ炭素数1〜5のアルキル基を表し、zは、3〜20の整数を表す。
アルキルシリケート化合物としては、メチルシリケート、エチルシリケート、イソプロピルシリケート、n−プロピルシリケート、n−ブチルシリケート、n−ペンチルシリケート、アセチルシリケート等が挙げられる。
光硬化反応を利用する場合、光重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジル、ベンゾフェノン、p−メトキシベンゾフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、α,α−ジメトキシ−α−フェニルアセトフェノン、メチルフェニルグリオキシレート、エチルフェニルグリオキシレート、4,4'−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン等のカルボニル化合物;テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド等の硫黄化合物;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ベンゾイルジエトキシフォスフィンオキサイド等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
電子線硬化反応を利用する場合、重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、4,4−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、メチルオルソベンゾイルベンゾエート、4−フェニルベンゾフェノン、t−ブチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2,4−ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン等のチオキサントン;ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン、2−メチル−2−モルホリノ(4−チオメチルフェニル)プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン等のアセトフェノン;ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾインエーテル;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド;メチルベンゾイルホルメート、1,7−ビスアクリジニルヘプタン、9−フェニルアクリジン等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
熱硬化反応を利用する場合、熱重合開始剤としては、例えば、メチルエチルケトンパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルパーオキシオクトエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ラウロイルパーオキサイド等の有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系化合物;前記有機過酸化物にN,N−ジメチルアニリン、N,N−ジメチル−p−トルイジン等のアミンを組み合わせたレドックス重合開始剤等が挙げられる。
重合開始剤の量は、重合性化合物100質量部に対して、0.1〜10質量部が好ましい。重合開始剤の量が0.1質量部未満では、重合が進行しにくい。重合開始剤の量が10質量部を超えると、硬化膜が着色したり、機械強度が低下したりすることがある。
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、帯電防止剤、離型剤、防汚性を向上させるためのフッ素化合物等の添加剤、微粒子、また少量の溶剤を含んでいてもよい。

疎水性材料

硬化樹脂膜20のモスアイ構造の表面の水接触角を90°以上にするためには、疎水性の材料を形成しうる活性エネルギー線硬化性樹脂組成物として、フッ素含有化合物またはシリコーン系化合物を含む組成物を用いることが好ましい。
フッ素含有化合物:フッ素含有化合物としては、下記式(3)で表されるフルオロアルキル基を有する化合物が好ましい。

−(CF2)n−X ・・・(3)

ただし、Xは、フッ素原子または水素原子を表し、nは、1以上の整数を表し、1〜20が好ましく、3〜10がより好ましく、4〜8が特に好ましい。フッ素含有化合物としては、フッ素含有モノマー、フッ素含有シランカップリング剤、フッ素含有界面活性剤、フッ素含有ポリマー等が挙げられる。
フッ素含有モノマーとしては、フルオロアルキル基置換ビニルモノマー、フルオロアルキル基置換開環重合性モノマー等が挙げられる。フルオロアルキル基置換ビニルモノマーとしては、フルオロアルキル基置換(メタ)アクリレート、フルオロアルキル基置換(メタ)アクリルアミド、フルオロアルキル基置換ビニルエーテル、フルオロアルキル基置換スチレン等が挙げられる。
フルオロアルキル基置換開環重合性モノマーとしては、フルオロアルキル基置換エポキシ化合物、フルオロアルキル基置換オキセタン化合物、フルオロアルキル基置換オキサゾリン化合物等が挙げられる。
フッ素含有モノマーとしては、フルオロアルキル基置換(メタ)アクリレートが好ましく、下記式(4)の化合物が特に好ましい。

CH=C(R)C(O)O−(CH)m−(CF)p−X ・・・(4)

ただし、R7は、水素原子またはメチル基を表し、Xは、水素原子またはフッ素原子を表し、mは、1〜6の整数を表し、1〜3が好ましく、1または2がより好ましく、pは、1〜20の整数を表し、3〜10が好ましく、4〜8がより好ましい。
フッ素含有シランカップリング剤としては、フルオロアルキル基置換シランカップリング剤が好ましく、下記式(5)の化合物が特に好ましい。

(Rf)aRbSiYc ・・・(5)

Rfは、エーテル結合またはエステル結合を1個以上含んでいてもよい炭素数1〜20のフッ素置換アルキル基を表す。Rfとしては、3,3,3−トリフルオロプロピル基、トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチル基、3−トリフルオロメトキシプロピル基、3−トリフルオロアセトキシプロピル基等が挙げられる。
R8は、炭素数1〜10のアルキル基を表す。R2としては、メチル基、エチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
Yは、水酸基または加水分解性基を表す。
加水分解性基としては、アルコキシ基、ハロゲン原子、R9C(O)O(ただし、R3は、水素原子または炭素数1〜10のアルキル基を表す。)等が挙げられる。
アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、i−プロピルオキシ基、ブトキシ基、i−ブトキシ基、t−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、3,7−ジメチルオクチルオキシ基、ラウリルオキシ基等が挙げられる。
ハロゲン原子としては、Cl、Br、I等が挙げられる。
C(O)Oとしては、CHC(O)O、CC(O)O等が挙げられる。
a、b、cは、a+b+c=4であり、かつa≧1、c≧1を満たす整数を表し、a=1、b=0、c=3が好ましい。
フッ素含有シランカップリング剤としては、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリアセトキシシラン、ジメチル−3,3,3−トリフルオロプロピルメトキシシラン、トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチルトリエトキシシラン等が挙げられる。
フッ素含有界面活性剤としては、フルオロアルキル基含有アニオン系界面活性剤、フルオロアルキル基含有カチオン系界面活性剤等が挙げられる。
フルオロアルキル基含有アニオン系界面活性剤としては、炭素数2〜10のフルオロアルキルカルボン酸またはその金属塩、パーフルオロオクタンスルホニルグルタミン酸ジナトリウム、3−[オメガ−フルオロアルキル(C6〜C11)オキシ]−1−アルキル(C3〜C4)スルホン酸ナトリウム、3−[オメガ−フルオロアルカノイル(C6〜C8)−N−エチルアミノ]−1−プロパンスルホン酸ナトリウム、フルオロアルキル(C11〜C20)カルボン酸またはその金属塩、パーフルオロアルキルカルボン酸(C7〜C13)またはその金属塩、パーフルオロアルキル(C4〜C12)スルホン酸またはその金属塩、パーフルオロオクタンスルホン酸ジエタノールアミド、N−プロピル−N−(2−ヒドロキシエチル)パーフルオロオクタンスルホンアミド、パーフルオロアルキル(C6〜C10)スルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩、パーフルオロアルキル(C6〜C10)−N−エチルスルホニルグリシン塩、モノパーフルオロアルキル(C6〜C16)エチルリン酸エステル等が挙げられる。
フルオロアルキル基含有カチオン系界面活性剤としては、フルオロアルキル基含有脂肪族一級、二級または三級アミン酸、パーフルオロアルキル(C6〜C10)スルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩等の脂肪族4級アンモニウム塩、ベンザルコニウム塩、塩化ベンゼトニウム、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩等が挙げられる。
フッ素含有ポリマーとしては、フルオロアルキル基含有モノマーの重合体、フルオロアルキル基含有モノマーとポリ(オキシアルキレン)基含有モノマーとの共重合体、フルオロアルキル基含有モノマーと架橋反応性基含有モノマーとの共重合体等が挙げられる。フッ素含有ポリマーは、共重合可能な他のモノマーとの共重合体であってもよい。
フッ素含有ポリマーとしては、フルオロアルキル基含有モノマーとポリ(オキシアルキレン)基含有モノマーとの共重合体が好ましい。
ポリ(オキシアルキレン)基としては、下記式(6)で表される基が好ましい。

−(OR10)q− ・・・(6)

ただし、R10は、炭素数2〜4のアルキレン基を表し、qは、2以上の整数を表す。R10としては、−CH2CH2−、−CH2CH2CH2−、−CH(CH3)CH2−、−CH(CH3)CH(CH3)−等が挙げられる。
ポリ(オキシアルキレン)基は、同一のオキシアルキレン単位(OR10)からなるものであってもよく、2種以上のオキシアルキレン単位(OR10)からなるものであってもよい。2種以上のオキシアルキレン単位(OR10)の配列は、ブロックであってもよく、ランダムであってもよい。
シリコーン系化合物:シリコーン系化合物としては、(メタ)アクリル酸変性シリコーン、シリコーン樹脂、シリコーン系シランカップリング剤等が挙げられる。(メタ)アクリル酸変性シリコーンとしては、シリコーン(ジ)(メタ)アクリレート等が挙げられる。

親水性材料

硬化樹脂膜20のモスアイ構造の表面の水接触角を25°以下にするためには、親水性の材料を形成しうる活性エネルギー線硬化性樹脂組成物として、下記の重合性化合物を含む組成物を用いることが好ましい。
4官能以上の多官能(メタ)アクリレートの10〜50質量%、
2官能以上の親水性(メタ)アクリレートの30〜80質量%、
単官能モノマーの0〜20質量%の合計100質量%からなる重合性化合物。
4官能以上の多官能(メタ)アクリレートとしては、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、コハク酸/トリメチロールエタン/アクリル酸のモル比1:2:4の縮合反応混合物、ウレタンアクリレート類(ダイセル・サイテック社製:EBECRYL220、EBECRYL1290、EBECRYL1290K、EBECRYL5129、EBECRYL8210、EBECRYL8301、KRM8200)、ポリエーテルアクリレート類(ダイセル・サイテック社製:EBECRYL81)、変性エポキシアクリレート類(ダイセル・サイテック社製:EBECRYL3416)、ポリエステルアクリレート類(ダイセル・サイテック社製:EBECRYL450、EBECRYL657、EBECRYL800、EBECRYL810、EBECRYL811、EBECRYL812、EBECRYL1830、EBECRYL845、EBECRYL846、EBECRYL1870)等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
4官能以上の多官能(メタ)アクリレートとしては、5官能以上の多官能(メタ)アクリレートがより好ましい。
4官能以上の多官能(メタ)アクリレートの割合は、10〜50質量%が好ましく、耐水性、耐薬品性の点から、20〜50質量%がより好ましく、30〜50質量%が特に好ましい。4官能以上の多官能(メタ)アクリレートの割合が10質量%以上であれば、弾性率が高くなって耐擦傷性が向上する。4官能以上の多官能(メタ)アクリレートの割合が50質量%以下であれば、表面に小さな亀裂が入りにくく、外観不良となりにくい。 【0084】 2官能以上の親水性(メタ)アクリレートとしては、アロニックスM−240、アロニックスM260(東亞合成社製)、NKエステルAT−20E、NKエステルATM−35E(新中村化学社製)等の長鎖ポリエチレングリコールを有する多官能アクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
ポリエチレングリコールジメタクリレートにおいて、一分子内に存在するポリエチレングリコール鎖の平均繰り返し単位の合計は、6〜40が好ましく、9〜30がより好ましく、12〜20が特に好ましい。ポリエチレングリコール鎖の平均繰り返し単位が6以上であれば、親水性が十分となり、防汚性が向上する。ポリエチレングリコール鎖の平均繰り返し単位が40以下であれば、4官能以上の多官能(メタ)アクリレートとの相溶性が良好となり、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物が分離しにくい。
2官能以上の親水性(メタ)アクリレートの割合は、30〜80質量%が好ましく、40〜70質量%がより好ましい。2官能以上の親水性(メタ)アクリレートの割合が30質量%以上であれば、親水性が十分となり、防汚性が向上する。2官能以上の親水性(メタ)アクリレートの割合が80質量%以下であれば、弾性率が高くなって耐擦傷性が向上する。
単官能モノマーとしては、親水性単官能モノマーが好ましい。
親水性単官能モノマーとしては、M−20G、M−90G、M−230G(新中村化学社製)等のエステル基にポリエチレングリコール鎖を有する単官能(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等のエステル基に水酸基を有する単官能(メタ)アクリレート、単官能アクリルアミド類、メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムメチルサルフェート、メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムメチルサルフェート等のカチオン性モノマー類等が挙げられる。
また、単官能モノマーとして、アクリロイルモルホリン、ビニルピロリドン等の粘度調整剤、部材への密着性を向上させるアクリロイルイソシアネート類等の密着性向上剤等を用いてもよい。
単官能モノマーの割合は、0〜20質量%が好ましく、5〜15質量%がより好ましい。単官能モノマーを用いることにより、部材と硬化樹脂との密着性が向上する。単官能モノマーの割合が20質量%以下であれば、4官能以上の多官能(メタ)アクリレートまたは2官能以上の親水性(メタ)アクリレートが不足することなく、防汚性または耐擦傷性が十分に発現する。
単官能モノマーは、1種または2種以上を(共)重合した低重合度の重合体として活性エネルギー線硬化性樹脂組成物に0〜35質量部配合してもよい。低重合度の重合体としては、M−230G(新中村化学社製)等のエステル基にポリエチレングリコール鎖を有する単官能(メタ)アクリレート類と、メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムメチルサルフェートとの40/60共重合オリゴマー(MRCユニテック社製、MGポリマー)等が挙げられる。
以上説明した太陽電池用透明部材10にあっては、表面に複数の凸部19を有し、凸部19間の平均周期が400nm以下であり、凸部19の先端部の幅TWと凸部19の底部の幅BWとの比(TW/BW)が0.3〜0.8であり、凸部19の高さHと前記BWとの比(H/BW)が1.5以上であるため、可視光領域から近赤外線領域の全域において反射率を低く抑えることができる。
なお,、太陽電池用透明部材は、図示例の太陽電池用透明部材10に限定はされない。例えば、複数の凸部19は、太陽電池用透明部材10においては、反射防止フィルム16の硬化樹脂膜20の表面に形成されているが、硬化樹脂膜20を設けることなく透明性基材18の表面に直接形成されていてもよく、反射防止フィルム16を貼着することなく部材本体12の表面に直接形成されていてもよい。ただし、ロール状モールド22を用いて効率よく複数の凸部19を形成できる点、および凸部19が破損した際に反射防止フィルム16を貼りなおすことができる点から、反射防止フィルム16の硬化樹脂膜20の表面に複数の凸部19が形成されていることが好ましい。
また、本発明の太陽電池用透明部材は、図5に示すように、光の入射側となる第1の主表面と、該第1の主表面とは反対側の第2の主表面との両方に複数の凸部19が形成されていてもよい。
本発明の太陽電池用透明部材と、光の入射側とは反対側の第2の主表面に積層される屈折率が異なる層21との界面に複数の凸部19が存在することによって、界面反射が低減され、受光損失が発生しなくなる。また、層間の密着性が向上する効果もある。
透明性基材18(材料)の表面に複数の凸部を形成する方法としては、材料の表面を直接加工する方法、凸部に対応した反転構造を有するモールドを用いる方法等が挙げられる。生産性、経済性の点から、凸部に対応した反転構造を有するモールドを用いる方法が好ましい。
モールドに反転構造を形成する方法としては、電子線描画法、レーザー光干渉法、アルミニウムの陽極酸化等が挙げられる。大面積の反転構造を簡便に生産できる点から、陽極酸化アルミナの表面に複数の細孔(凹部)を形成する方法が好ましい。

【0093】

太陽電池>

本発明の太陽電池は、本発明の太陽電池用透明部材が、前記凸部が形成された側の表面が光の入射側となるように配置されたものである。太陽電池としては、pn接合型、色素増感型等が知られているが、本発明の太陽電池は、いずれのタイプの太陽電池であってもよい。

pn接合型

図6は、本発明の太陽電池の一例を示す断面図である。太陽電池50は、インターコネクタ52を介して接続された複数の太陽電池素子54と;太陽電池素子54の受光面側に、凸部が形成された側の表面が光の入射側となるように配置された太陽電池用透明部材10と;太陽電池素子54の受光面とは反対側に配置された第2の部材56と;太陽電池用透明部材10と第2の部材56とを貼り合わせると同時に、これらの間に太陽電池素子54を固定する透明樹脂層58とを有する。
太陽電池素子54は、p型とn型の半導体を接合した構造を有するpn接合型太陽電池素子である。pn接合型太陽電池素子としては、シリコン系、化合物系等が挙げられる。
第2の部材56の材料としては、ガラス、アクリル系樹脂、ポリカーボネート、スチレン系樹脂、ポリエステル、セルロース系樹脂(トリアセチルセルロース等)、ポリオレフィン、脂環式ポリオレフィン等が挙げられる。
透明樹脂層58の材料としては、ポリビニルブチラール、エチレン−酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。

プリズム型

図8 太陽電池の他の例を示す断面

図8は、本発明の太陽電池の他の例を示す断面図である。太陽電池80は、入射側の表面に対して他方の表面が傾斜した断面三角形のプリズム形状の部材本体12、部材本体12の入射側の表面に接着剤層(図示略)を介して貼着された反射防止フィルム16および部材本体12の他方の表面に設けられた反射層82とから構成される太陽電池用透明部材10と;反射防止フィルム16を通って部材本体12に入射した太陽光が部材本体12内で反射しながら集光される部材本体12の端面に設けられた、太陽発電セル84とを有する。



Zenith

Anti-Reflection Coatings

氷晶石(cryolite)
図10 太陽電池のシミュレーションモデルの層構造

WEEF

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