各種太陽電池の長所と短所

図4 斜視図

【符号の説明】 1 基材 2 背面電極 3 p型光吸収層(カルコパイライト化合物半導体層) 4 n型バッファ層 5 透明導電層 6 集電電極 6a 薄膜金属層 6b 金属粒子層 7 ドープ層 8 加工ライン 9 ユニットセル 10,20 太陽電池(太陽電池シート)


特開2011-243721|太陽電池用集電電極、太陽電池及びその製造方法

電気抵抗が小さい金属粒子層と透明電極層との間に金属粒子層の密着性を高めた薄膜金属層を有し、低温成膜の集電電極で、カルコパイライト化合物半導体層の光吸収層に熱ダメージ与えず、集電電極の低抵抗化、透明電極層との間の接触抵抗の低減化が図れ、曲線因子を高めることができ、変換効率が高い。また、太陽電池の反りが低減でき、応力による層間剥離を抑制できる太陽電池の製造方法の提案。

課題を解決するための手段

透明電極層5上に設けた薄膜金属層6a、、薄膜金属層6a上に設けられた金属粒子層6bとの積層電極体で、金属粒子層6bが樹脂成分を実質的に含まず、金属粒子で形成されている集電電極6で構成。薄膜金属層6aの膜厚が0.01〜1μmの範囲内であり、金、銀、銅、パラジウム及び白金の群から選ばれた1つ、また2以上の金属からなる合金で形成され、この集電電極6は、カルコパイライト化合物半導体層を有する、透明電極層との密着性に優れ、接触抵抗が小さい集電電極を備えた太陽電池とその製造方法を提供する。

実施例1

この実験例は、透明電極層5上に設けた集電電極6の構造形態について検討した実験例。基材1として3cm角サイズのソーダライムガラス基板を準備し、そのガラス基板を洗浄、乾燥した後、背面電極層2としてMo層をDCスパッタリング法で形成した。Mo層の厚さは0.1〜1μmでよいが、ここでは0.5μmとした。続いて、背面電極層2上にp型半導体である銅・インジウム・ガリウム・セレン(CIGS)系半導体層3を同時蒸着法(通称:三段階法と呼ばれている。)で形成した。CIGS系半導体層3の厚さは1〜2μmでよいが、ここでは2μmとした。続いて、CIGS系半導体層3上に、バッファ層4としてn型半導体であるCdS層を溶液成長法(CBD法)で形成した。溶液成長法に用いる溶液は、硫酸カドミウム、チオ尿素及びアンモニアを含む水溶液で、この溶液を撹拌しながら基板を浸漬して溶液温度70℃で20分間保持し、CdS膜をCIGS系半導体層3上に厚さ0.05μmで形成した。続いて、透明電極層5として、酸化亜鉛の膜をRFスパッタリング法で形成した。酸化亜鉛の膜は真性絶縁体(ドーパントなし)であるi−ZnOとAlがドープされたZnO:Alを積層した。i−ZnOの膜厚は0.2μm以下が適当であり、ここでは0.1μmとした。また、ZnO:Alの膜厚は0.3〜1μmでよいが、ここでは0.5μmとした。

続いて、透明電極層5の上に、集電電極を以下の3形態で作製。

<試料1>:透明電極層5上に厚さ1μmのAl膜をメタルマスクを介して蒸着した集電電極
<試料2>:透明電極層5上に厚さ0.1μmのAg膜をメタルマスクを介して蒸着した集電電極
<試料3>:透明電極層5上に厚さ0.1μmのAg膜をメタルマスクを介して蒸着し、さらにそのAg膜上に下記組成の導電ペーストをスクリーン印刷法で塗布し、120℃のオーブン中で30分間乾燥・焼成して、厚さ20μmの金属粒子層6bを形成してなる集電電極、の3形態とした。
なお、透明電極層5上に形成するAg膜の厚さは0.01〜1μmが適当だが、ここでは0.1μmとした。また、導電ペーストで形成した金属粒子層6bの厚さは20μmとしたが、スクリーン版の厚さを選択することにより1〜100μm(好ましくは20〜80μm)に変更することが可能である。

図1

【符号の説明】 1 基材 2 背面電極 3 p型光吸収層(カルコパイライト化合物半導体層) 4 n型バッファ層 5 透明導電層 6 集電電極 6a 薄膜金属層 6b 金属粒子層 7 ドープ層 8 加工ライン 9 ユニットセル 10,20 太陽電池(太陽電池シート)

導電ペースト

導電ペーストは、三ツ星ベルト株式会社製のAgナノ粒子ペースト(商品名:MDot−SLP/H)である。導電ペーストに含まれるAg粒子は、平均粒径が10〜30nmの範囲の微粒子群(ここでは平均粒径約20nmの金属微粒子群Aを用いた。)と、平均粒径が約1μmの粒子(金属粒子群B)とを混合したものである。金属微粒子群A:金属粒子群Bは1:2〜2:1(質量比)である(ここでは約1:1程度とした。)。導電ペースト中の銀含有率は90〜95質量%で、残部は溶媒(α−ターピネオール)であり、バインダー樹脂は含まれていない。

評価

得られた太陽電池において、形成した試料1〜試料3の集電電極のテープ剥離試験を実施した。テープ剥離は、幅8mmのテープ(ニチバン株式会社製、商品名:CT24)を各集電電極に貼り、そのテープの一端を180°折り返して約300mm/秒の速さで引き上げて集電電極の剥離の有無を確認した。その結果、試料1〜試料3の集電電極の剥離は見られなかった。
得られた太陽電池のi−V特性を評価した。i−V特性の測定は、メカニカルスクライブ法で複数のテストセル(0.5cm)に切り分けて、テストセルを作製し、ソーラーシミュレーター(AM1.5)で測定した。その結果を表1と図5に示した。表1及び図5に示すように、試料1の集電電極(Al蒸着)と、試料3集電電極(Ag蒸着+Agペースト印刷)との比較において、特に曲線因子FFが67.0%から70.1%に増加し、その結果、変換効率が増加した。なお、曲線因子FF(Fill Factor)は、太陽電池としての電流−電圧特性曲線(i−V曲線)の良さを表すパラメータであり、[最大出力/(開放電圧×短絡電流)]で表される。この値が大きいと言うことは、太陽電池の内部損失が小さく性能が優れていることになる。

実験例1で得られた太陽電池のi−V測定結果
表1 ソーラーシミュレーター(AM1.5)測定結果

実験例2

この実験例2では、導電ペースト中の樹脂成分の含有量の変化が集電ペースト層のシート抵抗に及ぼす影響について検討した。3cm角のソーダライムガラス基板を洗浄・乾燥し、そのガラス基板上に下記組成の導電ペーストをスクリーン印刷で2.8cm角ベタパターンで印刷した。スクリーン版は、線数:325線、乳剤厚:20μmとした。印刷後、120℃に設定したクリーンオーブンで30分間乾燥して導電ペースト層を形成した。

導電ペースト

導電ペーストは、三ツ星ベルト株式会社製のAgナノ粒子ペースト(商品名:MDot−SLP/H)に所定量(0.1質量%、0.3質量%、1.0質量%)のエポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン株式会社製、商品名:グレード826)と硬化剤(ジャパンエポキシレジン株式会社製、商品名:ジシアンジアミド、グレードDICY 7)を添加したものである。なお、硬化剤は、エポキシ樹脂100質量部に対して5質量部を混合した。Ag粒子は、平均粒径が10〜30nmの範囲の微粒子群(ここでは平均粒径約20nmの金属微粒子群Aを用いた。)と、平均粒径が約1μmの粒子(金属粒子群B)とを混合したものである。金属微粒子群A:金属粒子群Bは1:2〜2:1(質量比)である(ここでは約1:1程度とした。)。導電ペースト中の銀含有率は90〜95質量%、エポキシ樹脂と硬化剤は上記質量%で、残部は溶媒(αーターピネオール)である。自公転型の撹拌機で1分間攪拌してAgナノ粒子ペーストとエポキシ樹脂とを混練した。

評価

印刷した導電ペースト層のシート抵抗は、Loresta−EPで測定し、その結果を表2に示した。エポキシ樹脂を添加していない実験例1の試料3で用いた導電ペーストで形成した導電ペースト層に比べ、エポキシ樹脂を1質量%加えた導電ペーストで形成した導電ペースト層は、抵抗値が4倍以上であり、集電電極としては不適であった。一方、エポキシ樹脂を0.3質量%加えた導電ペーストで形成した導電ペースト層は抵抗値の増加を60%程度(比抵抗では50%程度)に抑えることができ、エポキシ樹脂を0.1質量%加えた導電ペーストで形成した導電ペースト層は抵抗値の増加を10%程度(比抵抗でも10%程度)に抑えることができ、問題なかった。したがって、導電ペーストに配合するエポキシ樹脂の含有量は1質量%未満、好ましくは0.3質量%以下、特に好ましくは0.1質量%以下が妥当と判断できる。

表2 導電ペースト層のシート抵抗

実験例3

この実験例3では、導電ペーストの乾燥温度が導電ペースト層の抵抗に及ぼす影響について検討した。3cm角のソーダライムガラス基板を洗浄・乾燥し、そのガラス基板上に下記組成の導電ペーストをスクリーン印刷で2.8cm角ベタパターンで印刷した。スクリーン版は、線数:325線、乳剤厚:20μmとした。印刷後、100℃、120℃、150℃にそれぞれ設定したクリーンオーブンで30分間乾燥して導電ペースト層を形成した。

導電ペースト

導電ペーストは、三ツ星ベルト株式会社製のAgナノ粒子ペースト(商品名:MDot−SLP/H)である。導電ペーストに含まれるAg粒子は、平均粒径が10〜30nmの範囲の微粒子群(ここでは平均粒径約20nmの金属微粒子群Aを用いた。)と、平均粒径が約1μmの粒子(金属粒子群B)とを混合したものである。金属微粒子群A:金属粒子群Bは1:2〜2:1(質量比)である(ここでは約1:1程度とした。)。導電ペースト中の銀含有率は90〜95質量%で、残部は溶媒(αーターピネオール)であり、バインダー樹脂は含まれていない。

評価

印刷した導電ペースト層のシート抵抗は、Loresta−EPで測定し、その結果を表3及び図6に示した。乾燥温度100℃の場合は、40分後でも抵抗値は下がりきらなかった。一方、乾燥温度が120℃では20分で抵抗値が低い値に落ち着き、150℃では10分で抵抗値が低い値に落ち着いた。また、30分後のシート抵抗値については、120℃で4.8mΩ/□、150℃で3.9mΩ/□であり、抵抗率に換算すると、120℃で9.6μΩcm、150℃で7.8μΩcmであった。
なお、実験例1の試料1のように、Al蒸着膜(厚さ1μm)の集電電極のシート抵抗値を測定したところ、その値は20mΩ/□であったが、この実験例4で得られたAgペースト層のシート抵抗値はその1/4〜1/5に低減することができた。

図6 実験例3の乾燥温度がシート抵抗に及ぼす影響を示すグラフ
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実験例4

この実験例4では、集電電極を形成した後に加熱処理して、カルコパイライト化合物半導体層に対する印加温度の影響について検討した。実験には、実験例1の試料1(Al膜、厚さ1μm)の太陽電池を用いた。

評価

得られた太陽電池をメカニカルスクライブ法で複数のテストセル(0.5cm)に切り分けてテストセルを作製し、加熱前後の特性をソーラーシミュレーター(AM1.5)で測定した。加熱は、120℃、150℃、180℃、200℃に加熱したクリーンオーブンでそれぞれ30分行った。その結果を表4に示した。表4に示すように、加熱温度が高くなるに従い、開放電圧の低下が大きくなり、変換効率が低下した。特に180℃以上では、変換効率は15%未満になった。この結果は、カルコパイライト化合物半導体層に対しては、高い温度の印加は避けるべきであることを示している。

表4 メカニカルスクライブ法

実験例5

この実験例5では、透明電極層と集電電極を形成する前に加熱処理して、カルコパイライト化合物半導体層に対する印加温度の影響について検討した。実験には、実験例1の試料1(Al膜、厚さ1μm)の太陽電池を用いた。

評価

透明電極層と集電電極を形成する前の2つの試料について、200℃に加熱したクリーンオーブン中に30分入れて熱処理を行った。対比として、熱処理を行わないもの(2つの試料)も準備した。これらの試料に、実験例1の試料1と同様にして透明電極層とAl膜を形成して太陽電池を作製した。
得られた太陽電池をメカニカルスクライブ法で複数のテストセル(0.5cm)に切り分けてテストセルを作製し、加熱の有無の特性をソーラーシミュレーター(AM1.5)で測定した。CdS−n型バッファ層を形成した後(透明電極形成前)に加熱した場合でも、テストセルを完成させた後に加熱した場合と同様、開放電圧が低下し、変換効率が低下した

表5 メカニカルスクライブ法

実験例6

この実験例6では、透明電極層の材料をITOに代えたときの太陽電池の特性に及ぼす熱処理の影響を検討した。上記実験例6において、透明電極層としてi−ZnO(厚さ0.1μm)をRFスパッタリング法で形成し、さらに、ITO(厚さ0.5μm)をDCスパッタリング法で形成した他は、実験例6と同様にした。

評価

透明電極層の材料を変えた2つの試料について、200℃に加熱したクリーンオーブン中に30分入れて熱処理を行った。得られた太陽電池をメカニカルスクライブ法で複数のテストセル(0.5cm2)に切り分けてテストセルを作製し、加熱の有無の特性をソーラーシミュレーター(AM1.5)で測定した。透明電極層をZnO:AlからITOに変えてもテストセルの性能は同等であったが、200℃、30分加熱した後は、特に曲線因子が著しく低下し、変換効率が大きく低下した。実験例6,7の結果より、加熱前後の変化の割合は、ZnO:Alに比べて、ITOの方が大きいことがわかった。

表6

実験例7

この実験例7では、蒸着Ag層(薄膜金属層6a)と印刷Ag層(金属粒子層6b)との接触抵抗値の評価を行った。3cm角のソーダライムガラス基板を洗浄、乾燥し、その基板上にi−ZnO/ZnO:Al(0.1μm/0.5μm)をRFスパッタリング法で形成した。抵抗値測定用に、図7に示すように、大きさ1〜2mmのパッドを複数形成した。なお、パッド間距離は4mmとした。まず、メタルマスクを介して、蒸着Ag層6a(0.1μm厚)を真空蒸着法で形成し、さらに、Ag蒸着で形成したパッドに重なるように、ナノAg粒子を含む導電ペースト(実験例1の試料3で用いたものと同じ。)をスクリーン印刷法で印刷した後に150℃で30分間処理して印刷Ag層6bを形成した。パッド間の抵抗値をプローブとテスターを使用して測定した。

図7 接触抵抗値の評価手順の説明図

結果

表7に示した結果は、それぞれ、測定4点の平均値である。表7の結果より、パッド間1〜3の全てのケースで、パッド間の抵抗値はレファレンスのAl−Al(膜厚:1μm)と同等レベルであった。このことから、透明電極層と着Ag層との界面、及び、蒸着Ag層と印刷Ag層との界面での接触抵抗は十分に小さいと判断できた。

表7

脚注およびリンク


太陽光発電メーカー比較

1.CIS系太陽電池、龍谷大学 理工学部 和田隆博
2.ギガワット時代の CIS系薄膜太陽電池、櫛屋勝巳
3.CIGS太陽電池モジュールで結晶シリコン太陽電池並の変換効率を実現、産業技術総合研究所



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